唱法華題目抄 16ぺージ

(ひゃく)(とし)(あいだ)()(たま)いし竜樹(りゅうじゅ)菩薩(ぼさつ)天親(てんじん)菩薩(ぼさつ)(とう)(あまね)如来(にょらい)聖教(せいきょう)(ひろ)(たま)うに天親(てんじん)菩薩(ぼさつ)(さき)小乗(しょうじょう)(せつ)一切(いっさい)有部(うぶ)(ひと)倶舎論(くしゃろん)(つく)つて阿含(あごん)十二年(じゅうにねん)(きょう)(こころ)()べて一向(いっこう)大乗(だいじょう)義理(ぎり)(あか)さず(つぎ)十地(じゅうち)(ろん)(しょう)大乗(だいじょう)(ろん)(しゃく)(ろん)(とう)(つく)つて四十余年(よんじゅうよねん)権大乗(ごんだいじょう)(こころ)()(のち)仏性(ぶつしょう)(ろん)法華(ほっけ)(ろん)(とう)(つく)りて(ほぼ)(じつ)大乗(だいじょう)()()べたり竜樹(りゅうじゅ)菩薩(ぼさつ)(また)(しか)なり天台(てんだい)大師(だいし)唐土(とうど)人師(にんし)として一代(いちだい)(わか)つに大小(だいしょう)権実(ごんじつ)顕然(けんねん)なり()人師(にんし)(わず)かに義理(ぎり)()けども分明(ふんみょう)ならず(また)証文(しょうもん)たしかならず(ただ)(まつ)(ろん)()(ならび)訳者(やくしゃ)唐土(とうど)人師(にんし)(なか)大小(だいしょう)をば(わか)つて(だい)にをいて権実(ごんじつ)(わか)たず(あるい)(ことば)には(わか)つといへども(こころ)権大乗(ごんだいじょう)のをもむきを()でず此等(これら)不退(ふたい)(しょ)菩薩(ぼさつ)()(すう)(にょ)恒沙(ごうしゃ)(やく)()()(のう)()とおぼえて(そうろう)なり。
(うたが)つて(いわ)唐土(とうど)人師(にんし)(なか)慈恩(じおん)大師(だいし)十一面(じゅういちめん)観音(かんのん)()(しん)(きば)より(ひかり)(はな)つ、善導和尚(ぜんどうわじょう)弥陀(みだ)()(しん)(くち)より(ほとけ)をいだすこの(ほか)人師(にんし)(つう)(げん)(とく)をほどこし三昧(さんまい)発得(ほっとく)する(ひと)()(おお)しなんぞ権実(ごんじつ)()(きょう)(わきま)へて法華経(ほけきょう)(せん)とせざるや、(こた)えて(いわ)阿竭多仙人(あかだせんにん)外道(げどう)十二年(じゅうにねん)(あいだ)(みみ)(なか)恒河(ごうが)(みず)をとどむ婆籔(ばそ)(せん)(ひと)自在天(じざいてん)となりて(みつ)()(げん)ず、唐土(とうど)道士(どうし)(なか)にも張階(ちょうかい)(きり)をいだし鸞巴(らんば)(くも)をはく第六(だいろく)(てん)魔王(まおう)(ぶつ)滅後(めつご)比丘(びく)比丘(びく)()優婆塞(うばそく)優婆夷(うばい)()羅漢(らかん)辟支(ひゃくし)(ぶつ)(かたち)(げん)じて四十余年(よんじゅうよねん)(きょう)()くべしと()えたり通力(じんりき)をもて智者(ちしゃ)愚者(ぐしゃ)をばしるべからざるか、(ただ)(ほとけ)遺言(ゆいごん)(ごと)一向(いっこう)(ごん)(きょう)(ひろ)めて(じつ)(きょう)をつゐに(ひろ)めざる人師(にんし)(ごん)(きょう)宿習(しゅくじゅう)ありて(じつ)(きょう)()らざらん(もの)(あるい)()にたぼらかされて(つう)(げん)ずるか、(ただ)法門(ほうもん)をもて(じゃ)(せい)をただすべし利根(りこん)通力(つうりき)とにはよるべからず。
(ぶん)(おう)元年(がんねん)太歳(たいさい)庚申(かのえさる)五月(ごがつ)二十八日(にじゅうはちにち)      日蓮(にちれん)花押(かおう)
鎌倉(かまくら)名越(なごし)(おい)()(おわ)んぬ

唱法華題目抄 15ぺージ

うべきを(かなし)(たま)いて()をたたしめ(たま)いき、(たと)えば(はは)()(やまい)あると()れども当時(そのとき)()(かなし)んで左右(さゆう)なく(きゅう)(くわ)へざるが(ごと)し、喜根菩薩(きこんぼさつ)()(ゆえ)当時(そのとき)()をばかへりみず(のち)(らく)(おも)いて()いて(これ)()()かしむ、(たと)えば(ちち)()(ゆえ)()(やまい)あるを()当時(そのとき)()をかへりみず(あと)(おも)(ゆえ)(きゅう)(くわ)うるが(ごと)し、(また)(ほとけ)在世(ざいせ)には(ほとけ)法華経(ほけきょう)()(たま)いしかば四十余年(よんじゅうよねん)(あいだ)等覚(とうかく)不退(ふたい)菩薩(ぼさつ)()をしらず、()(うえ)寿量(じゅりょう)(ほん)法華経(ほけきょう)八箇年(はちかねん)(うち)にも()()(たま)いて最後(さいご)にきかしめ(たま)いき末代(まつだい)凡夫(ぼんぷ)には左右(さゆう)なく如何(いか)がきかしむべきとおぼゆる(ところ)(みょう)(らく)大師(だいし)(しゃく)して(いわ)く「(ほとけ)()(その)()(ゆえ)(えら)末代(まつだい)結縁(けちえん)(ゆえ)()かしむ」と(しゃく)(たま)へり(もん)(こころ)(ほとけ)在世(ざいせ)には(ほとけ)一期(いちご)(あいだ)(おお)くの(ひと)不退(ふたい)(くらい)にのぼりぬべき(ゆえ)法華経(ほけきょう)名義(めいぎ)()して(ぼう)ぜしめず()をこしらへて(これ)()仏滅後(ぶつめつご)には(その)()(しゅう)は少く結縁(けつえん)(しゅう)(おお)きが(ゆえ)多分(たぶん)()いて左右(さゆう)なく法華経(ほけきょう)()くべしと(いわ)(しゃく)なり是体(これてい)(おお)くの(ほん)あり(また)末代(まつだい)()(おお)くは()()らず()()らざらんには()いて(ただ)実教(じっきょう)()くべきかされば天台(てんだい)大師(だいし)(しゃく)(いわ)く「(ひと)しく()()ざれば(ただ)(だい)()くに(とが)()し」(もん)(もん)(こころ)()をも()らざれば(だい)()くに(とが)なしと()(もん)なり(また)(とき)()()()(ほう)する(ほう)もあり(みな)(くに)(じゅう)(しょ)(にん)(ごん)(きょう)(しん)じて(じっ)(きょう)(ぼう)(あながち)(もち)いざれば弾呵(だんか)(こころ)をもて()くべきか(とき)()つて(よう)()あるべし。
()うて(いわ)唐土(とうど)人師(にんし)(なか)一分(いちぶん)一向(いっこう)権大乗(ごんだいじょう)(とどま)つて(じっ)(きょう)()らざる(もの)はいかなる(ゆえ)(そうろう)(こた)えて(いわ)(ほとけ)()()でましまして()四十余年(よんじゅうよねん)権大乗(ごんだいじょう)小乗(しょうじょう)(きょう)()(のち)には法華経(ほけきょう)()いて()わく「(にゃく)()小乗(しょうじょう)()乃至(ないし)()(いち)(にん)我則(がそく)()慳貪(けんどん)()()()不可(ふか)(もん)(もん)(こころ)(ほとけ)(ただ)爾前(にぜん)(きょう)(ばか)りを()いて法華経(ほけきょう)()(たま)はずば(ほとけ)慳貪(けんどん)(とが)ありと()かれたり、(あと)属累(ぞくるい)(ほん)にいたりて(ほとけ)(みぎ)御手(おて)をのべて()たび(いさ)めをなして三千(さんぜん)大千(だいせん)世界(せかい)(ほか)八方(はっぽう)(よん)(ひゃく)万億(まんおく)那由佗(なゆた)国土(こくど)(しょ)菩薩(ぼさつ)(いただき)をなでて未来(みらい)には(かなら)法華経(ほけきょう)()くべし、()()たへずば()(じん)(ほう)四十余年(よんじゅうよねん)(きょう)()いて()をこしらへて法華経(ほけきょう)()くべしと()えたり、(のち)涅槃(ねはん)(きょう)(かさ)ねて()(こと)()いて(ほとけ)滅後(めつご)四依(しえ)菩薩(ぼさつ)ありて(ほう)()くに(また)(ほう)四依(しえ)あり(じっ)(きょう)をついに(ひろ)めずんば天魔(てんま)としるべきよしを()かれたり(ゆえ)(にょ)(らい)(めつ)後後(ごご)()(ひゃく)(ねん)(きゅう)

唱法華題目抄 14ぺージ

らん、()(うえ)(ほとけ)四十余年(よんじゅうよねん)(あいだ)法華経(ほけきょう)()(たま)はざる(こと)(にゃく)(たん)(さん)(ぶつ)(じょう)衆生没在苦(しゅじょうもつざいく)(ゆえ)なりと在世(ざいせ)()すら(なお)(しか)なり(いか)(いわん)末代(まつだい)凡夫(ぼんぷ)をや、されば譬喩品(ひゆほん)には「(ほとけ)舎利弗(しゃりほつ)()げて(いわ)わく無智(むち)(ひと)(なか)()(きょう)()くことなかれ」云云(うんぬん)此等(これら)道理(どうり)(もう)すは如何(いか)(そうろう)べき、(こた)えて(いわ)智者(ちしゃ)(おん)物語(ものがたり)(おお)(うけたまわ)(そうら)へば所詮(しょせん)末代(まつだい)凡夫(ぼんぷ)には()をかがみて()左右(さゆう)なく()いて(ひと)(ぼう)ぜさする(こと)なかれとこそ(そうろう)なれ、(かの)(ひと)さやうに(もう)され(そうろう)はば御返事(おへんじ)(そうろう)べきやうは(そもそも)若但讃(にゃくたんさん)仏乗(ぶつじょう)乃至(ないし)無智(むち)人中(にんちゅう)(とう)(もん)()(たま)はば(また)一経(いちきょう)(うち)凡有所見(ぼんぬしょけん)我深敬汝(がじんきょうにょ)(とう)(とう)()いて不軽(ふきょう)菩薩(ぼさつ)杖木(じょうもく)瓦石(がしゃく)をもつて・うちはられさせ(たま)いしをば(かえり)みさせ(たま)はざりしは如何(いかん)(もう)させ(たま)へ。()うて(いわ)(いち)(きょう)(うち)相違(そうい)(そうろう)なる(こと)こそよに得心(こころえ)がたく(はべ)ればくわしく(うけたまわ)(そうろう)はん、(こた)えて(いわ)方便(ほうべん)(ぽん)(とう)には()をかがみて()(きょう)()くべしと()不軽(ふきょう)(ほん)には(ぼう)ずとも(ただ)()いて(これ)()くべしと()(はべ)り一(きょう)前後(ぜんご)水火(すいか)(ごと)し、(しか)るを天台(てんだい)大師(だいし)(かい)して(いわ)く「(もと)(すで)(ぜん)()るは釈迦(しゃか)(しょう)(もっ)(これ)将護(しょうご)(もと)(いま)(ぜん)()らざるは不軽(ふきょう)(だい)(もっ)(これ)強毒(ごうどく)す」(もん)(もん)(こころ)()善根(ぜんこん)ありて今生(こんじょう)(うち)得解(とくげ)すべき(もの)(これ)には(ちょく)法華経(ほけきょう)()くべし、(しか)るに()(なか)(なお)()いて(ぼう)ずべき()あらば(しばら)(ごん)(きょう)をもてこしらえて(のち)法華経(ほけきょう)()くべし、(もと)(だい)善根(ぜんこん)もなく(いま)法華経(ほけきょう)(しん)ずべからずなにとなくとも悪道(あくどう)()ちぬべき(ゆえ)(ただ)()して法華経(ほけきょう)()いて(これ)(ぼう)ぜしめて逆縁(ぎゃくえん)ともなせと()する(もん)なり、()(しゃく)(ごと)きは末代(まつだい)には(ぜん)()(もの)(おお)(ぜん)()(もの)(すこ)(ゆえ)悪道(あくどう)()ちんこと(うたが)()し、(おなし)くは法華経(ほけきょう)()いて()()かせて毒鼓(どっく)(えん)()()きか(しか)らば法華経(ほけきょう)()いて謗縁(ぼうえん)(むす)ぶべき時節(じせつ)なる(こと)(あらそ)()(もの)をや、(また)法華経(ほけきょう)方便(ほうべん)(ぽん)五千(ごせん)上慢(じょうまん)あり略開(りゃくかい)(さん)顕一(けんいち)()いて広開(こうかい)(さん)顕一(けんいち)(とき)(ほとけ)御力(おちから)をもて()をたたしめ(たま)(のち)涅槃(ねはん)(きょう)(ならび)四依(しえ)(へん)にして今生(こんじょう)(さとり)()せしめ(たま)うと、(しょ)(ほう)無行(むぎょう)(きょう)喜根菩薩(きこんぼさつ)勝意比丘(しょういびく)(むか)つて大乗(だいじょう)法門(ほうもん)()いて()ききかせて(ぼう)ぜさせしと、()(ふたつ)相違(そうい)をば天台(てんだい)大師(だいし)()して(いわ)く「如来(にょらい)()(もっ)ての(ゆえ)発遣(はつけん)喜根(きこん)()(もっ)ての(ゆえ)強説(きょうせつ)す」(もん)(もん)(こころ)(ほとけ)()(ゆえ)(のち)のたのしみをば()いて当時(そのとき)法華経(ほけきょう)(ぼう)じて地獄(じごく)にをちて()にあ